愛知県が生涯ゴールデンスラム達成を祝したことで再び注目を集めている車いすテニスの小田凱人選手。9歳で骨肉腫を発症し左脚の一部を失った少年が、わずか数年で世界ランキング1位に駆け上がった。家族の支え、最年少記録の数々、ゴールデンスラム達成までの道のりを追う。
小田凱人のプロフィール|9歳で骨肉腫、サッカー少年から車いすテニスへ
小田凱人は愛知県一宮市出身、2006年5月8日生まれ。サッカー少年だった彼の人生は9歳で一変し、車いすテニスとの出会いが新たな道を切り開いた。
プロサッカー選手の夢を絶った「骨肉腫」という宣告
小田凱人(おだ・ときと)は小学生時代、プロサッカー選手を本気で目指していた少年だった。
ところが9歳のとき、左脚に骨肉腫が見つかる。
パラサポWEBによれば、左脚の股関節と大腿骨の一部を切除し、人工関節に置換する大手術を受けた。サッカーボールを蹴る夢は、そこで断たれた。
しかも話はそれで終わらない。治療後に2度、がんの肺転移が発覚している。9歳の子どもが背負うには、あまりに重い試練だった。
国枝慎吾の映像が「スイッチ」を入れた
転機は入院中に見たテレビだった。
2012年ロンドンパラリンピック。車いすテニスで戦う国枝慎吾の姿に、少年は釘付けになった。
パラサポWEBの選手プロフィールには、この映像がきっかけで車いすテニスを始めたと記されている。10歳で競技を開始。サッカーの夢を失ってから、わずか1年後のことだ。
正直、このスピード感には驚かされる。普通なら落ち込んで当然の状況で、もう次の目標を見つけていたのだから。
東海理化所属——プロとしての現在地
現在の小田凱人は、株式会社東海理化に所属するプロ車いすテニス選手だ。
公式サイトにもプロフィールが掲載されており、愛知県一宮市出身の19歳(2026年3月時点)。
9歳で病気、10歳で競技開始、17歳で世界一。このタイムラインの密度は、ちょっと常軌を逸している。

世界最年少記録を次々更新|17歳で全仏制覇から生涯ゴールデンスラムまで
小田凱人が打ち立てた記録は「最年少」のオンパレードだ。17歳でグランドスラム制覇、18歳でパラリンピック金メダル、19歳で生涯ゴールデンスラム。すべて史上最年少。
17歳1か月2日——グランドスラム史上最年少優勝の衝撃
2023年6月、全仏オープン。
小田凱人は17歳1か月2日でグランドスラム初優勝を果たした。車いすテニスのグランドスラム史上、最年少記録だ。
同年のウィンブルドンも制覇。17歳の夏に、もう世界の頂点に立っていた。
さらに驚くのは、全仏優勝の2日後に世界ランキング1位に到達していること。17歳1か月4日。これも史上最年少だった。
パリパラリンピック金メダル——18歳の頂点
2024年9月、パリパラリンピック男子シングルス。
国際パラリンピック委員会の記録によれば、小田は車いすテニス男子シングルス史上最年少の18歳で金メダルを獲得した。
グランドスラムだけでなく、パラリンピックの頂点まで最年少で手にしたわけだ。
10歳で始めた競技で、8年後にはもう世界中の誰よりも強い。こんな選手、ちょっと記憶にない。
19歳で生涯ゴールデンスラム——国枝慎吾以来の偉業
2025年9月の全米オープンで優勝し、ついに「生涯ゴールデンスラム」を達成した。
Olympics.comの報道では、19歳3か月での達成は史上最年少。車いすテニス男子では国枝慎吾に次ぐ史上3人目の快挙だ。
そして2026年1月、全豪オープンでも優勝。NHKニュースが報じた通り、国枝慎吾以来史上2人目となるグランドスラム4大会連続優勝まで成し遂げた。通算グランドスラムシングルス優勝は8回。20歳にもなっていないのに、だ。
愛知県知事への表敬訪問も行われ、公的にも大きく顕彰された。地元の誇り、というやつだろう。

小田凱人の家族|父の公園練習・母の献身・弟の存在
これだけの偉業の裏には、家族の存在がある。父・母・姉・弟の5人家族。とりわけ父と母の支えが、少年を世界一に押し上げた。
父親——近所の公園で練習相手を務めた「最初のコーチ」
小田凱人が車いすテニスを始めた当初、練習相手を務めたのは父親だった。
中日新聞の報道によれば、近所の公園でボールを打ち合ったという。
専属コーチでもなければ、テニス経験者でもない。ただの「父親」が、息子のために球を出し続けた。
そこから世界一の選手が育った。この事実は、なかなか重い。
母・直子さんの献身——闘病と競技生活を支えた日々
9歳での骨肉腫発症、2度の肺転移。この壮絶な闘病を最も近くで支えたのは、母の直子さんだろう。
入院、手術、抗がん剤治療。子どもの病気ほど親にとって辛いものはない。
その苦しい時期を乗り越え、息子が車いすテニスという新しい夢に向かって走り出すのを見守った。選手としての小田凱人を語るとき、この家族の闘病の日々を抜きにはできない。
姉と弟・桃次郎——5人家族の「チーム小田」
小田家は5人家族。姉と弟がいる。弟の名前は桃次郎くん。
「凱人」に「桃次郎」。どちらの名前にも、親の強い想いが込められているのが伝わってくる。
小田凱人自身、自伝『凱旋 9歳で癌になった僕が17歳で世界一になるまでの話』を出版している。タイトルだけで胸にくるものがある。9歳で癌になった少年が、家族に支えられながら17歳で世界一になった——その全記録だ。

・生年月日:2006年5月8日(19歳)
・出身:愛知県一宮市
・所属:株式会社東海理化
・競技開始:10歳(2016年〜)
・グランドスラムシングルス優勝:8回(2026年1月時点)
・パラリンピック:2024年パリ大会 金メダル
・生涯ゴールデンスラム達成:2025年9月(史上最年少・19歳3か月)
・出典:小田凱人公式サイト



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