2026年4月12日、ハンガリーで16年ぶりの政権交代が起きた。ニュースで「ハンガリー」の名前を目にして、「そもそもどんな国だっけ?」と思った人も多いはず。温泉大国で、実は日本企業も180社が進出しているこの国の基本情報を整理しておこう。
ハンガリーの基本情報|面積・人口・言語・通貨をおさらい
ハンガリーは中央ヨーロッパに位置する内陸国で、面積は日本の約4分の1。人口は約954万人、公用語はハンガリー語(マジャル語)、通貨はフォリントだ。日本との経済的なつながりも意外と深い。
面積は日本の4分の1、人口は大阪府より少し多いくらい
JETRO(日本貿易振興機構)の統計によると、ハンガリーの面積は約93,024km²。日本の約4分の1にあたる。
人口は954万人(2025年1月時点)。大阪府の人口が約880万人だから、大阪府よりちょっと多いくらい、と言えばイメージしやすいだろうか。
首都ブダペストには169万人が暮らしていて、国の人口の約18%がここに集中している。ドナウ川を挟んで西の「ブダ」と東の「ペスト」が合併してできた街で、「ドナウの真珠」とも呼ばれる美しい都市だ。
公用語はハンガリー語——ヨーロッパなのに周辺国と全然違う言葉
外務省の基礎データにある通り、公用語はハンガリー語(マジャル語)。これが実に独特で、ドイツ語やフランス語とは系統がまるで違う。
フィンランド語やエストニア語と同じ「ウラル語族」に分類されていて、周辺のドイツ・オーストリア・スロバキアなどとは言語的に孤立している。
通貨はハンガリー・フォリント(HUF)。2024年の為替レートは1ドル≒365.69フォリント。EU加盟国だがユーロは導入していない。
日本企業は約180社が進出——意外と太い経済パイプ
ハンガリーと日本の経済関係は、知らない人が多いかもしれないが、実はかなり太い。
JETROによれば、ハンガリーに進出している日本企業は約180社。スズキがハンガリーで自動車を生産しているのは有名な話で、電気機器や一般機械の輸出も多い。
2024年の日本の対ハンガリー輸出は約13.47億ドル、輸入は約12.53億ドル。一人当たりGDPは23,272ドルで、EU内では中位だが、製造業の拠点として日系企業には重要な国だ。

16年ぶりの政権交代|オルバン退陣とマジャル新政権の行方
2026年4月12日の総選挙で、16年にわたって権力を握っていたオルバン首相が敗北した。新興野党「ティサ」のマジャル・ペーテル党首が圧勝し、ハンガリーの政治は大きな転換点を迎えている。
オルバン政権16年間で何が起きていたのか
オルバン・ヴィクトル前首相は2010年から16年間にわたって政権を握り続けた。
その間に何をやったかというと、メディアの統制、司法への介入、選挙制度の変更など、権威主義的な体制を着々と構築していった。
Bloombergの報道によれば、オルバン政権はロシア産エネルギーへの依存を深め、ウクライナ支援にも反対するなど、EU主流派と真っ向から対立していた。
EU内で「異端児」扱いされていたのがハンガリーだったわけだ。
マジャル・ペーテルとは何者か——45歳の元フィデス内部告発者
日本経済新聞の報道によると、新首相となるマジャル・ペーテルは45歳。率いる政党「ティサ(尊重と自由)」は比較的新しい政治勢力だ。
開票率90%の時点で、ティサは議席の69%を獲得。オルバン氏の与党フィデスは28%にとどまった。圧勝と言っていい。
興味深いのは、マジャル氏がもともとフィデス(オルバンの政党)の内部にいた人物だということ。体制の内側から矛盾を見て、反旗を翻した——このあたりの経緯が、国民の共感を集めた要因のひとつだろう。
EU・NATOとの関係修復はどうなるか
マジャル新首相は、EU・NATOとの関係修復を明確に約束している。
オルバン時代にはEUからの補助金が凍結されるなど、孤立が深まっていた。新政権がどこまで関係を立て直せるかが、ハンガリーの今後を左右する最大のテーマになる。
ただし、16年間で築かれた権威主義的な構造を解体するのは簡単ではない。メディア、司法、選挙制度——これらを元に戻すには時間がかかるだろう。
日本にとっても、EU内でのハンガリーの立ち位置が変わることで、進出企業への影響が出る可能性がある。180社の日系企業が見守っているはずだ。

源泉1,300か所の温泉大国|ブダペストの名物温泉と入浴文化
政治の話はさておき、ハンガリーといえば温泉だ。国内に約1,300か所の源泉があり、温泉施設は約350か所。日本に次ぐ「温泉大国」と言っても過言ではない。
火山がないのに温泉が湧く——カルパチア盆地の地熱パワー
日本の温泉は火山の恵みだが、ハンガリーは事情が違う。
地球の歩き方の解説によれば、ハンガリーの温泉はカルパチア盆地の地熱で地下水が温められたもの。火山がなくても温泉が湧くのだ。
ただし温度は35度前後とぬるめ。日本の感覚で言えば「ちょっとぬるい」。水着着用が一般的で、男女混浴のプール型が主流だ。
ブダペストだけで浴場50か所——「温泉都市」の称号は伊達じゃない
地球の歩き方によると、ブダペストには100を超える源泉と約50の浴場がある。
1934年には国際温泉療法会議から「温泉都市」の称号を授与されている。90年以上前から公式に認められた温泉の街なのだ。
有名なセーチェーニ温泉はヨーロッパ最大級の温泉施設で、黄色いネオバロック様式の建物の中に屋内外合わせて18のプールがある。お湯に浸かりながらチェスをするおじさんたちの写真を見たことがある人も多いだろう。あれがまさにセーチェーニだ。
グヤーシュとトカイワイン——温泉のあとに楽しむハンガリーの味
温泉あがりの楽しみといえば食事だが、ハンガリーのグルメも侮れない。
日本ハンガリー商工会議所によれば、国を代表する料理はグヤーシュ。牛肉・パプリカ・タマネギ・ジャガイモを煮込んだスープで、ハンガリー版の豚汁みたいな存在だ。パプリカはオスマン帝国時代にトルコ人が持ち込んだ唐辛子がルーツで、今やハンガリー料理に欠かせない調味料になっている。
そして酒好きなら知っておきたいのがトカイワイン。駐日ハンガリー大使館のプレスリリースによると、フランスのルイ14世が「ワインの王にして、王のワイン」と称した世界最古の貴腐ワインだ。トカイ地方のブドウ畑はユネスコ世界遺産にも登録されている。
温泉に浸かって、グヤーシュを食べて、トカイワインを飲む。なかなか贅沢な国じゃないだろうか。




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